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ホーム患者を生きる高齢者の歯:5 情報編 治療記録の保管が大切

高齢者の歯:5 情報編 治療記録の保管が大切

 高齢者の歯と健康は密接にかかわっている。歯がなくなり、食べ物をかみくだけなくなると、十分な栄養がとれずに、身体も衰えてしまう。入れ歯などを使い、食べる機能を維持することが重要だ。

 インプラント治療もその一つ。あごの骨に埋め込み、その上にアバットメントと呼ばれる土台を取りつけ、人工歯をつける。厚生労働省の2016年の調査では、60歳以上の約3%がつけていた。

 高齢者のインプラント治療は特に注意が必要だ。持病などを持っている場合が多いので、事前に手術のリスクについて評価する。日本口腔(こうくう)インプラント学会は、血液を固まりにくくする薬の服用の有無など、患者の全身状態を把握するチェックリストを作り、念入りに調べるよう呼びかけている。

 また、インプラントを長持ちさせるためには口の中を清潔に保ち、歯科医に定期的にメンテナンスしてもらうことが欠かせない。だが、高齢者は体が衰えて通院が難しくなったり、認知症になったりすると意思疎通が難しくなる。

 日本大学歯学部付属歯科病院の萩原芳幸・歯科インプラント科長(58)は「通院が不可能になる前や訪問歯科診療で積極的に治療できる時に、何らかの予防措置をとることが望ましい」と話す。

 インプラントで支える義歯や人工歯を家族や介護者が清掃しやすい形態に改造することや、インプラントや人工歯の破損、脱落に備えて入れ歯や仮の歯を作っておくとよいという。

 人工歯が破損した時の修理のしやすさも重要だ。萩原さんは「人工歯の固定法は審美性ではセメント固定に劣るものの、ネジ固定のほうが対応しやすい。手術前にインプラントを埋める場所や構造を主治医によく説明してもらい、将来起こり得る事態を考えて治療方法を決めるのが理想だ」という。

 不具合が起きた時、手術を受けた医療機関が廃院していて必要な情報が入手できないこともある。インプラントの種類などを記録した、日本口腔インプラント学会の「インプラントカード」や、日本顎(がく)顔面インプラント学会の「国際インプラント手帳」が役に立つ。学会は患者にきちんと保管しておくよう呼びかけている。(出河雅彦)

出典元:朝日新聞2019年3月15日朝刊 P.29「患者を生きる」 承諾番号:19-1318
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